2014年3月23日 (日)

「コピペは重罪」という報道はありがたい

 2014年1月末に理化学研究所の研究者が中心になった研究チームが,新万能細胞を作り出したとする画期的な論文を『ネイチャー』に投稿,掲載された。この論文は、幹細胞を作製する、より安全で簡単な技術を開発したと述べていた。ところが,この論文にいくつかの問題があることが指摘され,さらに中心となっている女性研究者の学位論文にも問題があることが明らかになった。

 「小保方晴子のSTAP細胞論文の疑惑」というサイトでは,1)データ改ざん・捏造,2)剽窃・不実記載,3)博士論文での不正,4)杜撰な実験・ES細胞混入疑惑,5)利益相反事項の隠蔽,6)共著者の論文でもデータ流用,7)早稲田大学の学位審査の欠陥が上げられている。さらに『週刊文春』2014年3月27日号では「小保方晴子さん 乱倫な研究室」と個人の生活や行動までがあげつらわれている。

 論文の手順に従って別の研究者がSTAP細胞を作り出すことができれば,また違った展開になるのだろうが,現時点では望み薄である。

 STAP細胞は難解であり,その背景もつかめないために,テレビや新聞は,もっぱらわかりやすい剽窃行為のほうを非難している。学位論文の冒頭20ページが出典を明示しない長大な引用であることが事実なら,これは言い逃れできない。

 「コピペ」と言う語も使いたくないが,ウェブで提供される文章を,パソコンにあるコピーアンドペーストでコピーして,例えばワードに貼り付けるという行為である。この「コピペ」は,個人で行う場合には容認されているので,日常的に行われている。企業内や様々な集まりで作られた説明資料には,無断引用が大量に含まれていることが多い。

 最近,大学では,学生の指導で,レポートや卒業論文における剽窃に神経を尖らせている。慶應義塾大学文学部では履修案内(2013年版)の「不正行為」に以下のような記述がある。

 また,レポートや論文における剽窃・盗用・代筆も不正行為です。残念なことにインターネット上の記事あるいは書籍の文章をそのままレポートに貼り込む剽窃・盗用がみられます。これらについても試験における不正行為と同等あるいはより深刻な不正として処分の対象となります。         

レポート・論文の執筆上の注意

  レポートや論文(卒業論文を含む)の執筆・提出は,定期試験,授業内試験と並んで大学での勉学の成果の証となる重要なものです。ところがレポートや論文の書き方のルールを守らないため,不合格になったり,場合によっては不正行為と判定されて処分の対象になったりすることもあります。

 こうした掲示は,今ではどの大学のどの学部でも行われている。学生がレポートの提出期限にせっぱ詰まって,ウィキペディアからそのままコピーし,ワードに貼り付けて提出し,たちまちわかって,処分されるという事例は,多発しているはずである。レポートを提出しないよりも,剽窃のほうが罪が軽いと考えるのか,あるいは見つからないと考えるのかわからないが,今やカンニングと同様に処分されるので,留年する可能性が高い。

 しかし,なぜ,論文やレポートでは,出典を明示して引用しなければならないかを説明するのは結構難しい。盗みであり不正であると言ってもなかなか伝わらない。教員は,それぞれ,自分で考えた説明をしているはずである。

 今回の小保方晴子氏の学位論文で「コピペ」があったらしいという報道は,論文における「コピペ」がニュースに取り上げられるほどに,また学位の取り消しにつながるほどに重罪であることを世間に認識,浸透させたという点で,よかったのかもしれない。