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2016年8月24日 (水)

不思議なバドミントン松友美佐紀選手

 リオデジャネイロオリンピックで良かったと思う日本選手は,個人種目で女性選手史上初のオリンピック4連覇の伊調馨選手,それに,重量挙げの三宅宏実選手,競泳の金藤理絵選手,それに男子体操団体と陸上男子400メートルリレーのメンバーである。

 しかし,こういう選手がいたのかと驚いたのは,バドミントンの女子ダブルスの高橋松友組である。優勝にいたるデンマーク戦での最後の五球の興奮は忘れられず,ビデオで何回も観た。これまでの高橋松友組についてニュースなどを調べているうちに,特に松友美佐紀選手に驚いた。

 普通の日本人の若い女性としか見えない二人はバドミントンの世界では,女子ダブルスのランクで世界一で,金メダル確実とされていたことを知らなかったのは不覚である。海外では実力が認められているばかりではなく,人気も絶大で,ユーチューブには,今年,バドミントンが国技となっているインドネシアで記載されたインドネシアオープン決勝戦のビデオがあるが,中国チームと対戦する高橋松友組には,会場から日本コール,かけ声が絶え間なく続き,まるでホーム状態になっていた。優勝が決まった時,松友選手はインタビューに如才なくインドネシア語で「ありがとう」と答えていた。

 松友選手が,シングルスよりダブルスをしているのは,シングルスでは,相手は一人でしかないが,ダブルスでは,相手の二人とパートナーを含めて三人なのでより楽しめる(研究したり,予想したりできる)からである。「パートナーを含めてコート上の三人をコントロールする」ことが松友選手の究極の目的で,高橋選手を「支配」したいのではなく,自分のショットによって相手の返球のコースを限定して,高橋選手に「気持ちよく打ってもらう」ようにしたいらしい。求道者というわけではないし,金メダルが目標というわけではなく,試合ごとに純粋に相手に勝ちたい,自分ができることを見つけたいと思っているとのことである。なかなかいない変わった選手である。

 真面目で,クールでガッツポーズなどはめったにせず,研究熱心である。もちろん,試合相手も研究してくるから,それを上回らなければならない。決勝戦では,第三ゲームではなく,負けた第一ゲームにこの点で悔いが残ったらしい。「金メダルを取りたいと思ってやってきたが,今日の1ゲーム目はもっとうまくできた。もっと強くなりたい」。

Matsutomo
 そして,第三ゲームで16-19となったとき,松友選手は,「相手に『おっ』と思わせたかった」と何度も言っている。これは,それまでの延長ではなく,相手の予想を完全に外したショットをしてみるということだったようで,緩い球を相手コートの隅に落としてまず17-19とし,次も相手が予想していなかった速いクロスで得点をあげ,18-19。そして,次は,前衛で,相手のコースを完全に読んで,左から右へ俊敏に動き,自分だけで連続三本を打ち込み19-19とした。以後は,高橋選手に任せ,5連続ポイントで勝った。崖っぷちから一気に豹変して,圧倒的な強さを見せた。

 松友選手には,「試合をどんどんしていくうちに,五輪で最後と決めている選手がたくさんいて,それがすごくつらくて,自分の中では。いろいろな選手がいたから,今の自分たちがあると思っているので,本当にもう戦えないと思うとつらかったです」という発言があり,これを,敗者にも思いやりのある珍しい選手と持ち上げている記事もあった。むしろ,世界中にいるライバルとの関係を正直に語っているのだろう。

 その面では,女子レスリングで吉田沙保里選手に勝った米国のヘレン・マルーリス選手にも松友選手と通じるところがあった。あえて,吉田選手と同じ階級を選び,研究しつくして倒した。試合後の態度は立派だった。

 テレビや新聞では,高橋松友組を「タカマツ」ペアと呼んでいるが,リスペクトに欠けていると思う。


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