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2016年4月20日 (水)

最終回には驚いた傑作『ちかえもん』

 NHKの木曜時代劇『ちかえもん』は,近松門左衛門に周囲がよってたかって『曾根崎心中』を書かせる話である。

Chikaemon  このドラマは放送中は一度も見なかった。しかし,山田太一氏や倉本聰氏が受賞している向田邦子賞の2015年の受賞者が藤本有紀氏で受賞作が『ちかえもん』と知り,俄然観たくなった。藤本有紀氏は,『ちりとてちん』,『平清盛』を書いた一般受けしないが,熱心なファンのいる脚本家である。

 DVDの発売は5月らしいので,NHKオンデマンドという有料のサービスで全8話を観た。予想以上,期待以上の良くできた作品だった。『あさが来た』と同じく大阪のNHKの制作。近松家,平野家,遊郭天満屋,堂島新地,文楽座などセットもリアリティがあり,音楽も斬新である。

 平成16年の正月,50歳過ぎの大阪の浄瑠璃作者近松門左衛門(松尾スズキ)は,スランプに陥っていた。侍をやめ10年以上書いてきたが,『出世景清』以来,当たりがない。妻子に逃げられ,母(富司純子)からは,親不孝者と言われ,年増の遊女のお袖(優香)に愚痴をこぼす毎日である。そこに,派手な格好の孝行糖ならぬ不孝糖売りの万吉(青木崇高),なにやらよからぬ魂胆のありそうな油屋九平次(山崎銀之丞)があらわれる。

 主人公は,当然,近松門左衛門なのだが,存在感は薄い。実質的には,天満屋の新人遊女のお初が中心である。お初を演じるのが早見あかりであるが,愛想なしで器量よしであるものの厄介者,健気だったり,凜々しかったり,妖艶だったりする。さらに三重スパイのような難しい役柄であり,やや,堅い感じもあるが,それもその出自にあっている。早見あかり見ているだけでも満足できる。

 

そして,お茶ひきの遊女で,近松門左衛門を「じじい」呼ばわりするが情愛のある優香もそれに劣らない。『曾根崎心中』初演のあと,芝居への感動の涙と近松門左衛門への安心した笑顔とでくしゃくしゃになった表情が可愛らしい。青木崇高と山崎銀之丞は怪演というにふさわしい。

 しかし,なんと言っても最終回である。最終回には,意外な出来事が続いて起きる。特に万吉の正体には驚いた。近松門左衛門は,お初を中心に人物相関図を作って,物語を動かそうとする。その上では,作者の藤本有紀氏が同じ事をしている。話を進めるためには万吉が必要だった。気がつきにくいが,万吉はこのドラマでは,進行係を務めている。松尾スズキは「ええっ,なぜそんなことする」と思うような冷酷なこともしていた,と後で気づいた。「うそとほんとの境目が面白い」ということばで納得させられる。


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