« 2013年9月 | トップページ | 2013年12月 »

2013年10月26日 (土)

忘却の『クリフトン年代記』

Jeffreyarcher  ジェフリー・アーチャーの作品は,『百万ドルをとり返せ!』,『大統領に知らせますか?』,『ケインとアベル』,『ロスノフスキ家の娘』,『めざせダウニング街10番地』,『ロシア皇帝の密約』までは,新潮文庫で出る度に読んでいたが,その後は遠のき,長篇を2点,短篇集を読んだ覚えがある。ジェフリー・アーチャーは英国の作家でオックスフォード大学を出て,下院議員になったが,詐欺にあって辞職,稼ぐために『百万ドルをとり返せ!』を描いたらミリオンセラーになり,人気作家になったかと思うと,事件を起こして投獄されたり,変化の多い一生をおくっている。今は70歳を過ぎている。

 自分でも認めるこのストーリー・テラーが,『クリフトン年代記』を書き始め,これまで第三部まで出ている。日本では,今年の5月に『時のみぞ知る』(Only time will tell)(戸田裕之訳,新潮社 上下)として翻訳刊行された。これを,7月始めに読み終えた。
 9月末に,第二部の『死もまた我等なり』(The Sins of The Father)(戸田裕之訳,新潮社 上下)が刊行された。これを買って読もうと思った。そこで気がついたのであるが,第一部の内容が思い出せない。イギリスが舞台で真面目な主人公が最後に大変な目に遭っていたことだけは覚えていたが,細部の記憶がない。そこで,第一部『時のみぞ知る』の下巻を,もう一度読み直した。内容をほとんど忘れていたことがわかった。

 第二部を読み始めれば,第一部を思い出すことができたのかもしれないが,こう忘れやすいのは困ったことである。フィクションは特に覚えにくいのかもしれない。一方では,ジェフリー・アーチャーの小説は,骨格だけでで出来ていて,登場人物の心理などはほとんどないので忘れやすいのかもしれない,と思ったりもする。


2013年10月20日 (日)

『ちりとてちん』のBS再放送は嬉しい

Tiritotetin  NHKの連続テレビ小説『ごちそうさん』は古くさくてあまり観る気になれない。『あまちゃん』は,まず,BSプレミアムで7時半から観て,さらに総合テレビで8時からもう一度観ていた。BSプレミアムの一つ前の番組は,宮崎あおいの『純情きらり』(2006年)で,いつも最後の5分くらいを観ていたが,これも戦前が舞台のテンポののろい作品だった。

 『あまちゃん』が終わって,もう朝のBSプレミアムを観ることはなくなったが,715分からの再放送は『ちりとてちん』(2007年)であることに気付いた。これはとても嬉しい。最初の数回は見逃したが,和久井映美が小さな喜代美とかわらけ投げをする回からずっと観ている。

 『ちりとてちん』は,放送されていたときに最初から観ているし,DVDも確かあるはずである。2週目の最後では,もう,高校を卒業した貫地谷しほりが,小浜を出て行った。少し,展開が速いように感じる。

 小浜線の列車に乗った貫地谷しほりに向かってのど自慢会場で和久井映美が五木ひろしの『ふるさと』を歌う。この連続テレビ小説屈指の名場面は,よく覚えているし,四年前に小浜線でここを通った時にこの場所を確かめた。

これを観ていて,『あまちゃん』の冒頭,春子が開通した北三陸鉄道に乗って家出するところを思い出した。春子は,母が海岸で大漁旗を振っているのを見なかった。その後,アキが上京するときは,やはり大漁旗を振る祖母に気付いて手を振っている。

『ちりとてちん』では,のど自慢会場にいた貫地谷しほりの叔父と弟が貫地谷しほりに大漁旗を振っていた。『あまちゃん』脚本の宮藤官九郎は,『ちりとてちん』にインスパイアされたのだろうか。そういえば,能年玲奈は「海女クラブ」を作ることを思いつくが,確か貫地谷しほりは,常打ち小屋建設を言い出したはずである。地味で目立たないと自分で思いこんでいる娘が,やがて自分を確立し,周りに影響を与えていくという全体のテーマも共通している。


2013年10月19日 (土)

『リーガルハイ』と『クロコーチ』

Legal2  2013年10月から12月のテレビドラマでは,やはり『リーガルハイ』が良い。初回の視聴率が高く,2回目に下がったけれど,初回は,失敗作だったように思う。堺雅人演じる古美門研介は『半澤直樹』のような権威に立ち向かう英雄サラリーマンではなく,裁判に勝つためには手段を選ばない,幼児的な悪徳弁護士である。水戸黄門『半澤直樹』を期待した視聴者が去ったのは当然だろう。
 2回目は,話が複雑になっていたが,隠れた願いというなかなかの感動作になっていた。新しい登場人物はまだ未知数であるものの,新垣結衣のコメディセンスは十分に発揮されているので,安心して見ることができそうだ。

 新しく始まった『クロコーチ』の初回は,一体何だかよくわからないままだった。三億円事件の真犯人が関係しているらしいことはわかった。第二回は,引き続いて大勢死ぬのであっけにとられたが,話は簡単だった。連続殺人犯の男は気味が悪かった。神奈川県警の悪徳刑事長瀬智也の評価が高いが,東大法学部卒で県下の重大事件を10年分暗記しているという剛力彩芽もよくやっている。

Kkurokouchi  理解不能な状況で,毎回酷い目に遭うが,知性は高いがぼーっとした感じはこの異様なドラマを支えている要素の一つである。前作『ビブリア古書堂の事件手帖』の古本店主も原作のイメージとの違いが次第に気にならなくなって,独自の世界ができていたように思う。

 まだまだ先が長いのに,進み方が速い『クロコーチ』は途中で破綻しないでほしい。


2013年10月11日 (金)

違い棚はどこにいったのか:東京国立博物館「京都」展

Kyototen  始まったばかりの「京都 - 洛中洛外図と障壁画の美」展を東京国立博物館に見に行った。

 最初に,国宝の上杉本をはじめとして,4点の洛中洛外図が並べられている。全部で7点が展示されるが開催時期の前期,後期で展示作品は異なるらしい。やはり面白い。室町時代の終わりから江戸時代のはじめまでの京都の町中,貴族の屋敷,二条城,寺にいるそれぞれ個性のある服装をし,仕事をしたり遊びに興じる何百という人々が描かれている。あちこちと目移りし,動物が気になったり,祇園祭の山鉾に見入ったりする。 

 こうして並べてあれば,全体と細部を見比べることができる。松の枝振りが似ていたり,あるものはいやに雲の部分が多かったりすることがわかる。

 しかし,洛中洛外図は全体の1/4でこれで終わりである。次は。京都御所にあった,狩野派の中国の聖人を描いた障壁画が並んでいる。
そして,残り半分は,竜安寺の襖絵と二条城の障壁画である。展覧会の名称はこれでよかったのだろうか。なぜ,洛中洛外図を全部同時に並べないのか。

 第二会場に入ったとたん真っ暗な部屋に入ることになった。何だろうと思ったら,巨大なスクリーンに竜安寺の石庭が投影されている。この「京都」展のスポンサーであるNTVの制作らしい。博物館でデジタル画像を見せられてもと思い,さっさと通り抜けたが,大勢の観客が立ち止まっておとなしくみていた。

 最後は,二条城の「黒書院一の間,二の間の障壁画全69面と,二条城の象徴といえる大広間の「松鷹図」15面を展示。二条城を空間として壮大なスケールで再現」したとのことである。二条城にある障壁画を展示するのであるが,ご丁寧にも黒書院一の間,二の間と同じ展示空間を作って納めている。二条城を味わってほしいということなのだろうが,畳敷きの光のあたる空間と,暗い展示場とでは全く違う。

 それ以上に驚いたのは,いくつかある違い棚が取り払われていて,その跡が無惨な形になっていることである。何らかの事情で違い棚をつけたままにすることができなかったのだろうが,これは,よろしくない。誰がみてもそこに棚があったことは気付くし,強引に取り外したのではないかと思ってしまう。

 どうしてこんな無神経なことになったのだろう。


2013年10月 1日 (火)

山崎豊子『約束の海』未完は残念

 山崎豊子さんが88歳で亡くなった。『週刊新潮』で連載が始まった『約束の海』を読んでいて,どのような事件を扱うのか楽しみにしていたので,かなりショックを受けた。『約束の海』の主人公は,潜水艦に乗る自衛官である。ようやく登場人物にも馴染んできたところだったのに。

 全部と言うわけではないが,『白い巨塔』も『華麗なる一族』をはじめとして主要な作品は読んだ。最後に読んだのは,『運命の人』だった。後半はやや集中力をなくしたが,前半の傍若無人な政治記者の行動は具体的で強く印象に残っている。おそらく,事実に近いことであろう。綿密な取材と表現力,それに大きな政治問題,社会問題を丸ごと扱うスケールの大きな作風を持つ作家は,他にはあまりいない。高村薫さんよりも山崎豊子さんは読みやすい。

 『沈まぬ太陽』を連載中の『週刊新潮』を日本航空は機内に置かなかったというのは有名である。希有な国民作家であるのに,国民栄誉賞も文化勲章も与えられなかった。


« 2013年9月 | トップページ | 2013年12月 »