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2012年9月20日 (木)

政治ドラマ『平清盛』は面白いのに

 NHKの大河ドラマは,これまで観たことがなかたったが,昨年の『江〜姫たちの戦国〜』から観ている。『江』は,今年になって福田千鶴『江の生涯』(中公新書)を読んで驚いた。福田氏は日本近世政治史の研究者で,この本は2010年に出ているが,大河ドラマに便乗しているわけではなく,また,この本を読んでいれば大河ドラマの主人公にはできなかったはずである。何故かと言えば,この浅井江の一次史料は「故意に誰かが史料を隠滅したのではないか」というほど乏しい。名前も不確かだし,手紙も残っていない謎の人物である。大河ドラマ脚本家がこの本を参考にしたとは思われない。というのは,江は家光の生母ではないとはっきりと書かれているからである。これは大変なことである。大河ドラマとしての『江』は主役の演技のあまりの単調さと脚本の焦点のなさにあきれる駄作だった。

Kiyomori  さて,今年のNHK大河ドラマは『平清盛』である。脚本は,名作『ちりとてちん』の藤本有紀氏であるから,初回から観ている。これは,ドラマとして実に見応えがある。9月の時点では,清盛と後白河法皇の丁々発止のやり取りとなっている。後白河法王が平家の力を削ごうとする。福原に居る清盛は,長男重盛に統領の座を譲っているが,重盛は非力である。ことが起こると清盛は比叡山をうまく使って法皇に対抗する。けれども,犠牲も出る。『平清盛』は,こうした政治的な駆け引きを中心としている。

白河法皇と清盛の父忠盛,源氏と平家,鳥羽上皇と崇徳上皇,藤原信西と守旧派貴族,重盛と宗盛,清盛と後白河法皇などの数々の対立軸を取り込んでいる。松山ケンイチは,今からみれば,清盛の若い頃から成熟し,黒幕として振る舞うまでを無難にこなしてきた。松田翔太のニヒルで食えない後白河法皇もよい。白河法皇の欲望も崇徳上皇の荒れようも遠慮なく扱われている。藤本氏の意図は明確である。

 ただ,この『平清盛』は,視聴率がよくない。第二回の17.8%が再校で,8月のオリンピック期間中は,7.8%も記録した。その理由はわからないでもない。『平家物語』の幾分細かい知識がないと人間関係やエピソードを理解できないからである。複雑で難しい話はいやだという視聴者には向かない。口に出して言っていることと心の中は大違いということが多くてはついて行けないだろう。

 しかし,子供の頃に児童向けに書かれた『平家物語』や『源平盛衰記』を何度も読んだが,今回はグーグルの電子書籍版で読み直すことになったし,待賢門院の本も読んだ。視聴率を気にするようになったNHKでは望めないことかもしれないが,何かにおもねることなく歴史を正面から取り上げるこうしたドラマは貴重である。


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