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2011年5月20日 (金)

地震の日々にも宙乗りをする市川亀治郎

 明治座で市川亀治郎が佐藤忠信/忠信実は源九郎狐を演じる『義経千本桜』の「河連法眼館」の段を観た。明治座の歌舞伎公演は16年ぶりだそうである。次は氷川きよし,その後はコロッケの公演であるから,明治座に行く機会は乏しい。客席をつぶして花道が作ってある。

Tadanobu 義経の前に二人の佐藤忠信があらわれる。静が詮議するために鼓を打つと鼓の皮となった親を慕う佐藤忠信に化けた子狐が現れる。市川門之助演ずる静御前が一人で鼓を意味ありげにしばらく打つ,すると花道の億から「出があるよ」と大きな声が聞こえる。思わず花道に目をむけると,いつの間にか,舞台中央,静の真ん前に市川亀治郎扮する佐藤忠信がいる。しまったと思う。「階段抜け」という方法で,舞台正面の階段の仕掛けで登場するのである。続いて,狐への早変わり,欄干渡があり,最後は宙乗りがある。

 もう三十年前だろうか,市川猿之助の忠信実は源九郎狐を観たし,テレビ番組で種明かしをするのを観た覚えがあるがすっかり忘れていて,素直に誘導されてしまう。

 亀治郎は,今は伯父の演出を忠実に再現している。しかし,若いので,運動量が多く,また,かわいらしい。

 最後の宙乗りは,席が悪くて全く見えなかったが,随分長い時間,空中で暴れていたようだった。このような強い地震の多い時期に,構わずよく演じるものだと感心した。


2011年5月12日 (木)

宮本直美『宝塚ファンの社会学』の語り口

 最近,呼んだ中で面白かった本は,欲望をあらわにして生きたフランスの王妃と王女たちのすごさを知ることのできる『「ワル姫さま」の系譜学 : フランス王室を彩った女たち』(鹿島茂.講談社,2010.445p.)と,猛烈にブラジルへの関心と好意が高まった『ブラジルの流儀 なぜ「21世紀の主役」なのか』(和田昌親編著.中央公論新社,2011.254p.(中公新書)),それに『宝塚ファンの社会学 スターは劇場の外で作られる』(宮本直美.青弓社,2011.191p.)である。

Takaraduka 宮本直美『宝塚ファンの社会学』は,宝塚の私設ファンクラブがどのように活動しているのかを長年の観察に基づいて淡々と語っていくというスタイルをとっている。東京では,日比谷の東京宝塚劇場の前,帝国ホテルへといたる道に,宝塚公演が行われている際には大勢の女性たちがたむろしていることはよく知られている。彼女たちの多くは,公演中の組のスターたちのファンクラブに属しており,よくコントロールされた人々である。ファンクラブは,チケットの入手と配布から観劇の際の拍手,楽屋入り・出待ちガード,さらにはスターを囲む会の設定,進行までを秩序よく行っている。

 ファンクラブ内の細々とした業務,ファンクラブ同士,他の組との連携が驚くほど合理的に遂行されていることが明らかにされる。何故そうなっているのかは,特に説明されなくても納得してしまい,このファンクラブ集団の行動はそれほど特異でもないように思えてしまう。多分,日本的であるのだろうが,特にそれを強調することもない。
 
 ともかく,宝塚の用語をそのまま用いて,ファンクラブのすぐ隣にいながらあくまで客観的な態度を崩さない語り口が見事である。
 
 連休中に,宝塚の大劇場で,一階一列目の席で観劇する機会があった。音楽学校の卒業生の初舞台でもあり,さほど宝塚に詳しくもないのにファン垂涎の席で観るのは申し訳ないことだと思ったが,紛れ込んだ外部の人間のことなど宝塚ファンは誰も気にしていないのである。


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