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2010年10月 3日 (日)

フロッピーディスクの思い出

 大阪地検特捜部の主任検事が,2010年9月21日に証拠隠滅容疑で逮捕された。フロッピーディスクのファイルの日付を昨年の捜査の当時に書き換えたということであるが,少し驚いた。何に驚いたかといえば2004年に厚生労働省でフロッピーディスクを使っていたこと,大阪地方検事局には,昨年でもフロッピーディスクを読み書きできるパソコンがあったらしいことにである。
 
 2010年4月27日にソニーがフロッピーディスクの生産を終了すると発表した。それを伝えるワイアードの記事の中で,「ソニーは生産打ち切りの理由を『需要が少ないから』としているが,それも相対的に言えば,ということのようだ。ソニーは驚くことに,2009年に日本でFDを1000万枚ちかくも販売しているのだ」とあった。

 1979年の8ビットパソコンPC-8001以来のパソコンユーザーであるが,PC-8001では確か外部記憶装置はカセットレコーダだった。1980年代の終わり頃,PC-9801UVには3.5インチFDDが2台付いていて,片方に常時一太郎のフロッピーディスクを入れて使っていた記憶がある。漢字変換をするたびに,フロッピーディスクにアクセスする音がした。考えてみればフロッピーディスクはなかなか頑丈だった。

Floppy 1990年代の後半まで自宅と勤め先の間でファイルを移動するためにフロッピーディスクを使っていたが,いつフロッピーデスク使用をやめたかは覚えていない。1990年代の後半にソフトを買うと数十枚のフロッピーに納められていて,インストールの際には,付ききりで交換しなければならなかったが,やがてCD-ROMになった。パソコン雑誌に付いてきたソフトやURLリストもフロッピーディスクからCD-ROMになった。パソコンにFDDが付かなくなり,4,5年前には持っていたフロッピーを全て壊して廃棄した。数時間かかった。

 お役所で,まだフロッピーディスクを使っているとすれば,外付けのフロッピーディスクを買わなければならないはずで高コスト体質と言われても仕方ない。それに,厚生労働省でもフロッピーディスクはデータ交換用で使っていたはずである。元のディスクはハードディスク内にあると思われ,それを消したはずもない。フロッピーディスク内のファイルの日付を書き換えるという行為の意味がよくわからない。


2010年10月 1日 (金)

ビリー・ワイルダー『情婦』の最後の15分間の速度

 NHKは,2010年9月にアガサ・クリスティ生誕120年を記念し,BSハイビジョンでアガサ・クリスティ関連映画をまとめて放送した。

Witness 『情婦』(Witness for the Prosecution,1957,ビリー・ワイルダー),『オリエント急行殺人事件』(Murder on the Orient Express,1974,シドニー・ルメット),『ナイル殺人事件』(Death on the Nile,1978,ジョン・ギラーミン),『地中海殺人事件』(Evil Under the Sun,1982,ガイ・ハミルトン),『クリスタル殺人事件』(The Mirror Crack'd,1980,ガイ・ハミルトン)を観た。ミステリーなので,観始めたら,最後まで集中力を切ることができない。この上映順に出来がよいように思えた。

 『情婦』を観るのは確か4回目であるが,またうならされた。それにしても,何故『検察側の証人』を『情婦』にしたのか理解に苦しむ。邦題を付けた人物は,中味を理解していなかったのだろう。終盤,判決の出た後,観客の理解が追い付かないままに,恐ろしい勢いで事態が進んでいく。チャールズ・ロートン演ずる老練弁護士が裁判をコントロールしていたはずなのに,それとは別な次元での進行があったらしいことがわかる。弁護士はいつの間にか脇役に下がり,真の主役が登場する。これを含めて幾重ものサプライズがあって,善人そうな人物とエゴイスティックな人物の実像を見誤っていたことに,観客は何とか気付かされる。さらにその上に最後の場面で,何かこみ上げてくるものがあるという,見事な手際である。観終わった後は,持っていたビデで,問題の箇所だけ再生して観たが,やはり,同じ人物とは見えない。演技力に驚嘆するしかない。本当に同一人物が演じているのだろうか。

Bisset 『オリエント急行殺人事件』は,番組の解説者が「この映画を日本人が好きなのは,赤穂浪士だからですね」ということばに納得した。確かにそうだ。謎解きというより,ここに至るまでの苦労を想像して感動するという仕組みになっている。オールスターキャストなのだが,ジャクリーン・ビセット当時30歳は特別扱いされているように思える。

 『ナイル殺人事件』と『地中海殺人事件』は,いかにも本格ミステリらしい,自分を傷つけるという点でアクロバッティングな話である。

 『アガサ/愛の失踪事件』(Agatha,1979,マイケル・アプテッド)も一緒に放送された。この映画の存在は,高橋哲雄『二つの大聖堂のある町』(筑摩書房,1985)に出てきたので知った。

 1925年に実際にあった11日間のアガサ・クリスティ失踪事件を元にしている。アガサ・クリスティ一人で車を運転していたが沼のそばで立木に衝突,その後,姿が消え,自殺したのではないかと大騒ぎになった。ハロゲートで発見されたこと,夫の愛人の姓を名乗っていたことなど枠は事実そのままである。最初はバースかと思ったがハロゲートは,温泉療法で有名な町である。

Agatha 監督は,アガサ・クリスティの作品にありそうな殺人トリックと密かな恋愛事件を組み合わせた作品にしたかったのだろう。ところが,慎み深い英国女性に,弱みにつけ込むアメリカ人ジャーナリストが強引に近づいていく話にしかみえない。ダスティン・ホフマンの無神経さ,厚かましさに終始不快感を感じざるを得なかった。一方,アガサ・クリスティ役のヴァネッサ・レッドグレーヴは美しい。


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