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2009年2月27日 (金)

あやうく『オーストラリア』を観に行くところだった。

 映画館で『オーストラリア』の予告篇は4,5回観た記憶がある。テレビのCMも何回か観た。ニコール・キッドマン久々の大作であるし,これまで,ニコール・キッドマン,ヒュー・ジャックマンの出演作はほとんど観ている。

 封切りになったら直ぐ観に行こうと思っていたが,念のために「Yahoo!映画」で評価をみておこうと思った。映画を観る前には,あまり中味を知らないでいようとしているが,評価の低い映画は避けたい。「Yahoo!映画」の投票は,大体,当てにしてよく,4点以上なら良いところがあり,3.5以下であれば,退屈である。ただ,たとえば『英国王 給仕人に乾杯!』のような退屈な作品が長く高評価であったこともある。

 『オーストラリア』は,「2.5」だった。驚いて,ユーザーレビューを観ると,「感動できるの!」,「退屈」といった見出しが並んでいる。最も「役立ち度」の高い(432人)「反日」という見出しのユーザーレビューを読んでその理由がわかった。

 予告編で,空襲しているのは日本軍だということはわかった。日本軍機が,オーストラリアを空襲したのは,これは事実である。ところが,この映画では,日本軍はオーストラリアに上陸して,「物語上重要なアポリジニを射殺」するのだそうである。日本軍がオーストラリアに上陸したことはないし,アポリジニに関してやましいところがあるのは,日本人ではないだろう。

 確認してよかった。あやうく,この映画の原案,製作,監督のバズ・ラーマンに貢献してしまうところだった。それにしても,このような史実をねじ曲げた映画を日本で上映しようとする配給会社があること,プロモーションにニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンが来日したことに驚く。

 幸い,米国でも興行成績はかんばしくないようであるが,日本では早々に,上映を打ち切ってほしいものだ。


2009年2月22日 (日)

本と映画とユーチューブ

 

ロバート・チャールズ・ウィルスン『時間封鎖』(Wilson, Robert Charles.Spin.茂木健訳.東京創元社,2008. 上下)は,『SFが読みたい! 2009年版』(早川書房)のベストSF2008海外篇で一位, WEB本の雑誌,今月の新刊採点,【文庫本班】2009年1月で評者5人全員が最高点だった。そこで,読んでみたのであるが,思っていた(例えば,ホーガン『星を継ぐもの』)ほどの作品ではなかった。時間の流れの違いを逆手にとった計画,地球外生命体のとっている形などは,センスオブワンダーの範囲であるが,人間ドラマ部分があまりに貧弱で,読み進むのに骨が折れた。

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Privatelife   映画『シャーロック・ホームズの冒険』(The Private Life of Sherlock Holmes,1970,ビリー・ワイルダー)を観るのは3回目だが,やはり映画として極めて高い水準にあると思った。ビリー・ワイルダー監督作品ということを知らないで観て,後で知ったら他の作品との違いに驚くだろう。とはいえ,この映画にはビリー・ワイルダー流の小道具,伏線があふれている。さりげなくはさまれた,スコットランドの湖畔をホームズとガブリエルが自転車で行く場面や雪のベーカー街はとても美しい。意外な登場人物,そして展開は,山田風太郎の明治ものを彷彿とさせる。数々の奇妙な事柄を解きほぐしてホームズは,謎を解くのだが,謎も謎を解くという行為も,全然別の意味を持っていて,大きな出来事の中の一挿話だったという複雑な構造を持っている。ある意味でミステリの限界までを示している。また,ある人物のいかにもなひと言で全てが終わりになるというのもよい。そして,最後のパラソルの場面は,それぞれが高度なプロである中年男女であることを考えると余計に切ない。

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 セルティックウーマンのリサ・ケリーの歌う『メイイットビー』は力強い。


2009年2月16日 (月)

本と映画とブログ

 スティーグ・ラーソン『ミレニアム:ドラゴン・タトゥーの女』(Stieg,Larsson, Millennium:Man Son Hatar Kvinnor,ヘレンハルメ美穂,岩澤雅利訳,早川書房,2008,上下)は,スウェーデンのミステリで,全世界で800万部のベストセラー,作者は三部作を書いた後で急死という話題作。

 ストックホルムで『ミレニアム』という雑誌の編集者ミカエルは,書いた記事を名誉毀損で訴えられ,身を引く。引退した実業家から家族の40年前の事件の解明を依頼され,へーデビー島に滞在する。その探索過程で明らかになることと,もう一つの事件捜査の二重構造になっているが,特に意外性があるわけではない。

 それよりも,読者を惹き付けるのは,調査をたすける「ドラゴン・タトゥーの女」リスベットである。全身に刺青があり,拒食症のようにみえ,情緒不安定,コミュニケーション障碍の扱いにくい若い娘だが,写真的記憶力があり,混沌の中からパターンを見つけ出す能力があり,さらにスウェーデン最高のハッカーという設定である。似たような登場人物が多く,それほど読みやすくもないが,リスベットの登場部分は退屈しない。

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Kissmestupid  外れなしと言われているビリー・ワイルダー監督作品にも愚作はいくつかある。特に内容と関係ない邦題がついているものがよくない。『地獄の英雄』(Ace in the Hole,1951),『ねえ!キスしてよ』(Kiss Me, Stupid,,1964),『恋人よ帰れ!わが胸に』(The Fortune Cookie ,1966)などである。

 どれも後味が極めて悪い。『ねえ!キスしてよ』は,当時,不道徳と言われたようであるが,今見ても薄汚い。これはもうキム・ノヴァクに対して失礼千万な仕打ちをしたといっていい。『恋人よ帰れ!わが胸に』は,全編,金をいかにふんだくるかだけであり,笑うことのないウォルター・マッソーが不快だ。

 この後は,よくなるのだから,この二本はきっとスランプだったのだろう。

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 『スタンダール研究会会報』のNo.18(2008/5)掲載(pdfファイルのp.14-20)の下川茂.書評「『赤と黒』新訳について」 は,光文社古典新訳文庫の野崎歓訳のスタンダール『赤と黒』(光文社)に対し,

仏文学関係の出版物でこれほど誤訳の多い翻訳を見たことがない。訳し忘れ、改行の無視、原文にない改行、簡単な名詞の誤りといった、不注意による単純ミスから、単語・成句の意味の誤解、時制の理解不足によるものまで誤訳の種類も多種多様であり、まるで誤訳博覧会である。それだけではない。訳文の日本語も、漢字の間違い、成句的表現の誤り、慣用から外れた不自然な語法等様々 な誤りが無数にある。フランス語学習者には仏文和訳の、日本語学習者には日本語作文の 間違い集として使えよう。

と手厳しい。

  「流行ばかり追いかけちゃって」,「きつい突っこみ」という訳文があるらしい。


2009年2月 8日 (日)

本と映画とウェブ

Rikyu  直木賞受賞の山本兼一『利休にたずねよ』(PHP研究所,2008,418p.)は,利休が秀吉の命で切腹した日から,遡って,家康,秀吉,細川忠興らとの茶席でのエピソードを,一つ一つ紹介していく形をとっている。

 その席にはどのような趣向があったのか,利休はそのような菓子や食事を供したのかが詳しく書き込まれている。

 利休は,美について迷うことはなかったる。絶対音感ならぬ絶対美感を持っていた。利休の美の一つは,その場における調和であり,その調和はどのようにしたら得られるかを知ることができ,これは余人に真似のできないもの技だった。

 ただ,大枠となっている話は,他の部分に比べて感傷的であるように思われた。

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 『媚薬』(Bell Book and Candle,1958,リチャード・クワイン監督)は,魔女(キム・ノヴァク)が禁断の掟を破り人間に恋する話。魔女である利点がわからず,掟を破ってもたいしたことはないように感じられ,あまりに単純なストーリーであるので,今の観客向けではない。

 当時35歳で全盛のキム・ノヴァクの不思議な妖しさ,訓練された猫が見所である。ビリー・ワイルダー作品に出演前のジャック・レモンが意外な役柄設定だった。

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 「日本の精巧な弁当アート「キャラ弁」:画像ギャラリー」は楽しい。

 やはり,最初のトトロが傑作。『ウォーリー』のイヴはなるほどゆで卵だったのか。

 


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