『U307を雷撃せよ』は現代の話
ドイツが電力問題で苦況に陥り,ドイツの首相は,中東の独裁者に支配されているテロ支援国家シラジに武器輸出して石油を手に入れるしかなくなった。しか,その武器というのが,潜水艦4隻である。
キールを出航した最新武装のディーゼル潜水艦4隻はジブラルタル海峡では待ち受ける英国海軍を撃破し,地中海では,米国空母キティホークと戦い,スエズから紅海を通り,ペルシャ湾の奧にあるシラジに向かう。
それに立ち向かうのがステルス性能を持った最新鋭駆逐艦タワーズを中心とする米国の艦隊である。
軍事スリラーは冷戦時代のスパイ小説のようなものである。これは,ジェイムズ・E・コップのアマンダ・ギャレットシリーズを継ぐ米国海軍ものである。
幾分かの政治的な現実を垣間見させてくれ,さらに現代の軍事テクノロジーの細部を教えてくれる。米国でドイツの軍事力を警戒する向きがあるとは意外だった。
基本的には,21世紀に駆逐艦対潜水艦という古典的な戦闘を見せようというものだ。駆逐艦は,潜水艦の行動を予測し,潜水艦は駆逐艦を騙そうとする。
著者の関心は魚雷である。今の魚雷の破壊力はすさまじく,艦の下で爆発すると大量の海水が一瞬のうちに蒸発し,船体は引き裂かれてしまうらしい。
この話のポイントは,ドイツと米国はNATOで共同運用を行っているため,マニュアルが共通であることである。つまり,ドイツの潜水艦隊司令官は,マニュアル通りの行動を取る米海軍指揮官の裏をかいていく。それに気付いたタワーズの女性下士官は,マニュアルに沿っているように見せながら,敵の予想しない戦い方をする。
冒頭の中国大使が米大統領に呼ばれてホワイトハウスに向かうエピソードは興味深かったが,今回は関係がなかった。次作が,中国の話になるのだろう。
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