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2007年5月30日 (水)

原作も翻訳も困りもののバインハート『図書館員』

Librarian  ラリー・バインハート『図書館員』(Beinhart, Larry. The Librarian.早川書房,2007,ハヤカワ文庫上下)の主人公ディビッドは大学図書館の図書館員であるが,解雇された同僚のエレイナに頼まれて富豪の老人の家で私設図書館をパートタイムで手伝うことになった。米国の大統領選挙は,まもなく投票を迎えることになっていた。現職大統領スコットは,盗聴をはじめとする様々な手を使って再選を果たそうとしていた。

 ストウはスコットの選挙資金を調達する後ろ盾だった。対立する民主党は,初の女性大統領を目指すマーフィーを候補としていた。スコットが有利だったが,最後のテレビ論戦で,失敗をし,窮地に追い込まれる。ストウらは,挽回するための計画を持っていたが,たまたまディビッドはそれを知って,逃げるはめになる。

 原題も"The Librarian"であるが,タイトルに惹かれて読もうとしたが,10ページも読めば駄作であることがわかる。一つの問題は,翻訳である。下訳者がいて,翻訳者がいて,編集者がいるのだろうが,チェックもされずこのような翻訳が商品となっているのは不思議である。昨今,「光文社古典新訳文庫」のような翻訳が売り物となっている企画があるのにどうしたことなのだろう。

 「図書館は自由の場所だ。嵐のような世界にあって,清潔で風雨のない場所なのだ。そこにはアイディアと情報がぎっしりと詰まっている。そうした要素が一体となって書物を収集し,変人やショッピング・カートを持ち込むような人々を惹きつけ,陰謀説を充満させる」。「陰謀説を充満させる」とは何だろう。

 「彼は帝国主義の詩人であると同時に,少年たちの冒険の詩人でもあった。私は彼の詩が大好きで,十歳か十一歳の頃には暗記していた。その年頃の少年には気高さがあり,それが刺激に満ちたものや,銃をもったカウボーイや,インディアン・スカウトや,冒険家や,王の銃兵への憧れを呼び起こす」。

 「ストウ家での古典的なアプローチ法といえば,素材を読み,一般的な図書館の分類システムに従って表題を作ることだっただろう。と同時に,副表題の分類をして適切な相互参照グループの構成を考えるはずだ。それはかなり専門的で時間のかかる作業になっただろう」。専門家からみても何をしてるのか全くわからない。

 普通ならこのあたりで,読むのをあきらめ捨ててしまう。ひどい翻訳を読むのは時間の無駄である。しかし我慢し,単語を頼りに読み飛ばして最後にいたった。図書館員が主人公だから,もしかすると専門知識を活かした活躍をするのかと思ったのであるが,この小説の意図はそうしたものではなかった。ブッシュとブッシュ大統領の批判,米国大統領選挙のスキャンダルの数々を紹介し,選挙後に「不誠実な選挙人」と称する最後の手段があることを暴露するのが目的の政治スリラーである。

 現実を反映しているのかどうか知らないが,この小説は乱暴で,また下品である。

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2007年5月25日 (金)

【京都】洋食店の中学生たち

Okazaki  京都の岡崎に,どんなガイドブックに載っている洋食店がある。

 2007年5月のある日,11時40分頃,この店に到着した。しかし,予想通り満席で,しばらく店の中の椅子に座って待った。ここのところ,京都にくるたびに,ここのチキンライスを食べている。

 二十数名の客がいたが,大多数は中学生のようだった。中学生が団体で来るのかと思って驚いていた。しかし,よく観察すると,どうも全員が同じ学校というわけではないようだった。五,六人ずつがかたまりになっていて,4組ほどいるようだ。そして,男が必ず一緒にいるが教員ではなさそうだ。

 最初の組が食べ終わって出て行く際の支払い方をみて,ようやく理解した。男は,ハイヤーの運転手で,この中学生たちは,修学旅行生であった。貸切ハイヤーによる「体験学習」を行っていて,子供たちが希望したのか,連れてこられたのか知らないが,この店に来たのだ。

 京都に限らず修学旅行の8割は,「体験学習」方式である(全国修学旅行研究協会『修学旅行における体験学習について』)。六,七人がグループとなり,「自主的に」調査した名所などを回るのであるが,一般には,バスや電車などの公共交通機関を使う。それも勉強だからである。

 学校側からみたこの「体験学習」方式のポイントは,学習支援と安全対策にある。安全対策を過度に重視する学校側と,タクシー会社の思惑が結びついて,貸切ハイヤーによる「体験学習」が生まれたらしい。

 この店には少し離れて駐車場がある。また,この店は,先着順を遵守している。例えば,4人席が空いて,次に並んでいる客が一人と三人だった時,合い席にすることはなく,先にきた一人の客だけを案内する。

 12時を過ぎたころにも貸切ハイヤーによる「体験学習」中学生グループがやってきた。しかし,この場合は,六人分の席が空くまで待つしかない。開店と同時に,この店を占拠したハイヤー運転手たちはそこまで考えていたのである。

 あまり気取ったところのない店である。入りやすいし,客を連れて来ているのだから,いいだろうと彼らは思っているのだろう。

 中学生が貸切ハイヤーに乗って行われる「修学旅行」は,第三者が見れば明らかに異様である。また,ここで見たハイヤーの運転手たちはどうかしている。

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2007年5月 9日 (水)

新しいビルにはもう書店はいらないらしい

Sinnmarubiru  物見高い,新しい物好きは直らず,2007年3月末グランドオープンの東京ミッドタウンにも,同じく4月末開館の新丸ビルにもいち早く出かけた。ただ,滞在時間は,極めて短い。

 東京ミッドタウンのほうが,広々としているし,わかりやすいと思った。

 さて,気付いたのであるが,新丸ビルのテナントには書店はない。東京ミッドタウンにはTSUTAYAの小規模な書店がひっそりとあるだけである。行ったことはないが,六本木ヒルズと新丸ビルの青山ブックセンターも大型書店ではなさそうである。

 かつては,大きなビルが開店すると,紀伊國屋書店や三省堂のような大型書店が入ることになっていた。今では,ジュンク堂やブックファーストが候補になるだろう。これは,書店に強力な集客効果があるためと聞いた。

 新丸ビルの直ぐ近くにはOAZOがあり,その中には丸善の大型店があるので,これでニーズには十分応えられるということだろうが,丸善の客が新丸ビルに行くとは思えない。

 書店側からみて,出店に支障があったのかもしれないが,それより,こうした新しいビルでは,それほど集客に気を遣わなくてもよく,さらに言えば,書店に来る客層にあまり期待していないということもありそうだ。せいぜい,個性のある青山ブックセンターに来る客くらいまでならよいと考えているのであろう。

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2007年5月 1日 (火)

丸ノ内線に可動柵

Kadosaku  2007年4月30日,東京の地下鉄,東京メトロ赤坂見附駅の丸の内線側に見慣れない設備があり,よくみるとホームドアだった。

 数日前には見あたらなかったものなので,好奇心をおさえきれず,駅員さんにきいてみた。

 「おとといからです」
 「まだ使っていません。一カ月後くらいから使います」
 「まもなく全駅に設置されます」

といった返事だった。

 東京メトロの中で古い路線の銀座線と丸の内線は第三軌条で集電していることもあって,他の私鉄との乗り入れは行われていない。また,ホームは短く狭く,最近ようやく,各駅のリニューアルが行われた。ここにホームドアの導入だった。東京メトロでは,2番目,都営地下鉄三田線を入れれば東京の地下鉄で三番目である。

 ホームドアつまり可動柵の利点は,転落事故防止や線路への突き落としに対する抑止にあると思っていたが,鉄道を運営する側には,ワンマン運転で車掌をなくすことができるのがありがたいらしい。

 ホームドアがあると空調の効率もあがるとのことである。ただ,停車してからホームドアが開くまでのわずかな時間がせっかちものには,やや長く感じる。

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