2009年7月 5日 (日)

地下鉄二景

 半蔵門線青山一丁目駅で,渋谷方面行きを待っていた。ここは地下2階で,地下4階にある大江戸線の連絡改札口行きのエスカレータがある。駅員がきて,客がエスカレータに乗るのを止め,階段に誘導し始めた。車椅子の乗客の姿が見えた。エスカレータは次第に減速し始め,乗り口の三段分のステップが水平になり止まった。つまり,車椅子を水平に支えるような形になった。そして,係員が車椅子を乗せ,動き始めた。

 初めて見た「車いす対応エスカレータ」である。こうしたエスカレータの存在すら知らなかった。十年ほど前からあるが,駅への設置はまだ少ないらしい。東京メトロでは,各路線平均2~3駅といったところであり,都営地下鉄では設置駅を見つけられなかった。一覧がないので確か得られないが,多分大阪や名古屋の地下鉄にもあるかもしれない。

 ところが,googleで「車いす対応エスカレーター」で検索される最初の項目は,2004年に起きた事故のことである。乗っている途中,水平だった三段が階段状になって,転落事故が起きたらしい。確かに,水平だったものが急に階段に変身したら怖い。もちろん,そうした事故の反省のもと,今の「車いす対応エスカレーター」ができたのだろう。


 地下鉄の表参道駅は,三本の路線が連絡するが,改札口のフロアはいつも混んでいる。休みの日も変わりはない。銀座線のホームから階段を下りて行くと,妙に人出が多かった。隣の渋谷から大挙やってきたという感じの少女たちが,一斉に携帯電話のカメラで写真をとっている。

 芸能人がいるのかと思ったらそうではなかった。このフロアには,太い円い柱が十本くらいあり,そこに,新製品やテレビドラマの大きなポスターが一週間ほど貼ってある。

 焦げ茶色の地に何人かの男の顔があるポスターが柱に貼ってある。これを撮っているのである。構わずポスターに近づいてみると「TOHOSHINKI」と書いてあった。「東方神起」の;オフィシャルサイトを見たら。「表参道駅に巨大広告掲出中」というニュース記事があり,「等身大以上の東方神起5人の写真が,表参道駅構内の11本の柱にイベント告知とリリース告知の2バージョン+全員バージョンで展開」と書かれていた。

 駅員が必死に「通路を確保して下さい」と怒鳴っているが,少女達は,これがイベントなのだから動こうとせず,おばさん達も写真を撮り始め,構内ますます混乱するばかり。

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2009年6月 9日 (火)

『やんごとなき読者』は女王陛下

Yangoto_2  アラン・ベネット『やんごとなき読者』(Bennett, Alan,The Uncommon Reader,市川恵里訳,白水社,2009. 269p.)は,イギリスのエリアベスII世を主人公とした小説である。

 女王陛下が飼い犬を追いかけて宮殿の普段,近寄らない場所に来ると,移動図書館のバスがひっそり停まっていた。犬の騒音を詫びるために車の中に入ったが,何か借りなければいけないと思った女王は,昔から読書にはあまり興味はなかった。

 しかし,一冊も借りないで帰ったら係の図書館員は,この図書館に欠けたところがあると思うかもしれない。そこで,アイヴィ・コンプトン・バーネット(Ivy Compton-Burnett)という英国作家の本を借りて出た。この本はよみづらかった。次の週に本を返しに行き,恋愛小説を借りたが,ユーモアのあるこの本にはすぐに夢中になった。

 そして,移動図書館にいた厨房の下っ端の若い男を書記にして,読む本の相談と入手を担当させることにした。こうして女王は読書にのめり込んで行くのだが,周囲のものどもは女王の読書を歓迎していなかった。女王ほど世界の各地に行き,著名人にあってきた人はいないのに,つまり本物を見てきたのになぜ世界の反映や説明に過ぎないものに興味をそそられるのか。

 こうして,首相を含む人々と軋轢を引き起こしながら女王は活字中毒になっていく。これはまず読書小説である。

 一冊の本は別の本へとつながる。
 読みたいだけ本を読むには時間が足りない。
 読書はともすると人を排除するもの。
 本は暇つぶしなんかじゃない。

といった読書についての言葉が並ぶが,もちろん70歳を超える著者が手放しで読書を礼賛するわけがない。読書がいかに問題を引き起こすか,特に,やんごとない方々には読書は不要なものであるかを説いている。女王からジャン・ジュネについて問われたフランス首相が途方に暮れるのは当然である。

 著者は,女王の読書を通じて自分の読書の趣味を吐露している。ディック・フランシスは,一,二冊でやめた。いろいろあったが,ヘンリー・ジェームズはやはり評価する。

 。著者は,もう一つ女王のものの見方を推測している。「女王のような生い立ちの者にとって,義務はつねに喜びに先立つものだった」,「いったん読み出した本は最後まで読むの。そういうふうに育てられたのよ」のような義務についての考え方もそうだが,ジェーン・オースティンの評価が変わるのが面白い。身分が隔絶した高みににある女王にとって,ミドルクラスの細かな階級の違いを背景にしたジェーン・オースティンの小説は最初は少しも馴染めなかった。しかし,沢山の本を読むうちに,ジェーン・オースティンの世界がわかるようになっていった。

 読書の筋力のついた女王は,最初は歯が立たなかったアイヴィ・コンプトン・バーネットもやすやすと読めるようになっていった。

 あまりに楽しく,一気に読んでしまった。

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2009年6月 3日 (水)

シネマコンプレックスの陥穽

Isla_fisher  週末に,『お買いもの中毒な私!』を観に行った。シネマコンプレックスであるだが,係員に映画の題名を言うのに抵抗があった。この映画館は,インターネット予約が出来る。座席の指定も出来る。前の晩にこの映画が予約画面の最上位にあることを確かめていた。出かける前にあまり時間がなかったが,急いでパソコンで予約した。随分席が埋まっているようだった。

 映画館で装置から切符を出し,指定されているスクリーンに行った。やはり混んでいて,しかもポップコーン入った大きな紙コップを抱えた10代男女が大勢いた。妙だなと思いつつ,予告編を観た。そして,あの不快なパイラシー撲滅キャンペーンの後,映画が始まった。日本の高校の卒業式の場面だった。本編の直前に予告編が入っていることがあるので,それかなと思ったが,違った。やがて,映画のタイトルが映し出された。『ROOKIES -卒業-』。

 そこで鈍い頭がようやく事態を理解した。パソコンで予約した時に,映画の題名をよく見ずに,最上段の映画を予約したが,順番が入れ替わっていたのだった。しかも,装置から出てくる切符に書いてあるのはスクリーン番号で,映画の題名はないのだ。そして,このシネマコンプレッックスでは,各スクリーン入り口には上映映画名は示されていない。

 さあどうするのか,このまま『ROOKIES -卒業-』を観るのか,出て行くのか。結局,若者たちの「なに,あれ」という視線を感じつつ,すごすごと外へ出た。係員に説明して途中からでも『お買いもの中毒な私!』を観ることができるのかもしれないが気が進まなかった。

 後で別の映画館で,『お買いもの中毒な私!』を観た。ここは二つの映画館があって窓口は一つである。もう一本の上映映画は,『60歳のラブレター』だった。私が口を開くときまで,窓口係員は,この人はきっと『60歳のラブレター』だなと思ったことだろう。

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2009年5月24日 (日)

アンティキティラ島の機械の謎

『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ』(Marchant, Jo. Decoding the Heavens. 木村博江訳.文藝春秋, 2009. 285p.)のアンティキテラは,ギリシャのクレタ島に近い島の名前である。1901年にその沖合に沈んだ古代の難破船から彫像や壺が発見されたが,その中に歯車としか見えない小さなブロンズ製遺物があった。


                             

Decoding_the_heavens_2  古代ギリシャに歯車があるはずはなかった。この発見は,しばらくは忘れ去られていたが,第二次大戦後,関心が向けられ始めた。これを乗せた船は紀元前1世紀に作られており,様々な証拠から紀元前86年から60年の間に小アジアを出航したらしいというところまで突き止められた。後にたまたま海に落ちたのではない限り,これはこの時代に作られたものである。けれども文字があるとはいえ,機械の断片しか残っていないし,アテネの博物館にしまい込まれていて,容易には目にすることができなかった。


 この機械の全体像はどのようなものだったのか,そして何のために作られたのかを解明する研究に取り憑かれた,科学史家,ロンドンの科学博物館の学芸員,そして記録映画プロデューサーらが僅かな手がかりを元に謎を解き明かそうとする。


 筆者は,女性の科学ジャーナリストであり,実によく調べてあって読みやすい。また,研究環境のよくない学芸員を主役に据えている点も理解できる。発見されてからの100年間に,研究で使われる機器が進歩していることがよくわかる。しかし,何よりも謎の大きさに惹かれて読み進むことになる。


 実は,ギリシャ時代に精密な機械が本当にあったということの他にもう一つ,驚いたことがある。それは,実質的に最初に解明作業を行ったのが,デレック・デ・ソラ・プライスだったことである。イエール大学で科学史を教えていたプライスは,科学や知識の成長法則を唱えたが,それを述べた著作『リトルサイエンス・ビッグサイエンス』は二十代の頃,何度も読み,特別に意味のある本だった。なるほど,これが本業だったのか。

 

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2009年5月11日 (月)

日本最長路線バスに乗る

 日本最長の路線バスは,奈良交通の奈良県の大和八木と和歌山県新宮を結ぶ168キロを6時間半で走る路線と思われる。もちろん高速道路を走るバスでは,もっと長い距離や時間のものはあるのだろうが,それには関心はない。

 この路線は,かなり有名で,テレビ番組でもしょっちゅう取り上げられている。乗ってみたいと思ったのは,日本最長に惹かれる子供心による部分が大きいが,吉野や大峰,十津川,大台ヶ原,あるいは南朝や塩沼亮潤『大峯千日回峰行』(春秋社,2007)などこの地域一帯に興味があるからである。

 前夜は奈良に泊まり,大和八木駅のバス乗り場に発車時刻9時15分の10分前に行ったが,もう5,6人並んでいた。乗車口が前方一箇所の普通のバスがやってくる。運転手の後ろの席が空いていたので,そこに座ったが,これはよかった。乗客は15人ほどだった。かなり多い乗客数であるらしい。

 しばらくは,市街地を走る普通の路線バスで,乗降は激しい。奈良県の西にある御所市,五條市を通る。五条バスセンターで10分の休憩がある。五条の病院前から何人か乗ってくる。五条駅から乗ってきた9人のバックパッカー老人集団は,ハイキングコース入り口らしいところで下りた。五條市の南部から山間に入っていく。

 一週間前の天気予報では,晴だったが,残念ながら,雨の予報となった。紀伊半島の南に低気圧があるので,大雨になる可能性もあった。しかし,雨は降ってきたもののたいしたことはなかった。ただ,道は濡れている。

Totsugawa_2  結果から言えば,乗っていた間,全く退屈することはなかった。道は山の中を川に沿って続いていく。新緑の山に霧が立ちこめているし,滝もある。ところどころにダムがある。琵琶湖と同じ広さという十津川村には温泉もある。道はよく整備されているが,細い道や,一車線のトンネルがあるが,運転手は,どう判断するのか,ほとんど対向車に出会わずにすむ。バックしたのは1回だけだった。自分で運転していたら,景色を楽しむことはできないし,狭い道での交換にかなり神経を使うだろう。

 乗ってくる地元の老人たちはみな相互に顔見知りで,挨拶しあっている。五条市の病院で乗ったお婆さんは,十津川の小さな集落で下りた。高校生が乗ってきて十津川高校で下りた。ICカードに1万円分チャージしていった。

 1日3便あるこの路線が存在しているのは,十津川村の人々の公共交通手段の確保のためという点が大きいようだ。自治体や住民に路線バス運行への配慮があることがよくわかった。また,十津川温泉や熊野に行くための観光路線という意義も多少はある。それに,今回,他に2,3人いたが,最長路線だからという客もいるわけである。

 和歌山県に入り,熊野本宮大社の先にある湯の峰温泉に泊まり,翌日,新宮まで行ったので,一気に6時間半乗ったわけではない。それでも5時間以上だったが,疲れはほとんど感じなかった。

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2009年5月 9日 (土)

映画『逢びき』は古びない

 2009年5月11日の夜中にBS2でデビッド・リーン『逢びき』(Brief Encounter)が放送される。

 60年前の白黒の『 逢びき』は,間違いなく恋愛映画の傑作である。

 数年前に初めて観て,その後500円DVDを購入し,一週間前にも観たばかり。

Briefencounter_2  平凡な男女の数週間にわたる出来事であるが,シンプルな中に様々な要素が凝縮されている。駅で列車が発着する光景,喫茶店の女主人と駅員のもう一つのドラマ,ラフマニノフ,劇中映画「パッション...」,そしておしゃべりで無神経なあの中年女性が,実は重要な役割を果たしていることに気付かされる。

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2009年4月29日 (水)

ブルーレイの将来

 レンタルビデオのTSUTAYAにブルーレイディスクが登場した。

Bluray  いつも行っている店では,ブルーレイは,青いパッケージで,縦に7段ほど,数十のタイトルが並んでいる。レンタル料は,DVDより100円高く設定されている。また,ブルーレイのプレイヤーを1日700円で貸し出している。

 レンタルビデオ店に足を踏み入れ,ビデオを借り始めたのは,2000年の夏だった。その店は今はなくなったが,その当時,今のブルーレイディスク同様DVDはほんの少ししか置いていなかった。借りるのはビデオテープだった。

 DVDの量は徐々に増えていった。2002年にDVDのコーナーができ,やがて,VHSと一緒に並べられるようになっていった。新作はVHS中心からDVD中心となり,2004年の冬,新作のほとんどは,DVDとなった。当時の新作『宇宙戦争』は,DVDは50本ほどに対してビデオは4本だった。

 2000年の時点で,5年後にはDVDがビデオテープを駆逐すると予想できたかといえば,自信はない。LPからコンパクトディスクへの転換もこのくらいの期間だっただろう。

 こうしたメディアの転換がおきたことについて,後から考えられ理由として,DVDはビデオテープより嵩張らない,操作しやすい,画質がよいなどといったことを挙げることができるだろう。

 レンタルの場合,持ち運ぶ際に樂というのはかなり大きな利点である。VHSを三本はかなり嵩張ってしまつに終えない。また,購入した場合も,保存場所の点で,DVDは有利である。それに巻き戻さなくてもよい。

 また,DVDの普及には,プレイステーション2が大きく寄与したと言われている。2000年に発売されたプレイステーション2は,2005年に全世界の出荷台数が1億台を超えた。これにはDVDの再生機能があり,本体の価格はDVDプレイヤーよりも安かったので,DVDを観るのに使われ,さらにDVDプレイヤーの価格低下を促した。つまり,同じ時期にプレイヤーが広まるという背景があった。

 では,ブルーレイは,DVDに置き換わるのだろうか。

 2006年発売のプレイステーション3ではブルーレイディスクが使われている。ただ,プレイステーション2ほどの勢いはない。ブルーレイがDVDに優るのは今のところ画質だけである。

 といった点からみて,映画ソフトの分野で,ブルーレイディスクがDVDを凌ぐのは難しいとのではなかろうか。

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2009年4月18日 (土)

あるデパートの男性用商品売り場にて

 東京の地下鉄銀座線から直ぐの老舗のデパートである。

 このデパートの男性用の下着靴下売り場は,コの字型で真ん中に島がある形式である。30~40平米くらいだろうか。ここに担当店員が一人常駐している。今は,店員なのか販売員なのか担当者なのかよくわからないが,「店員」とする。

 あまり客はいないので,普段は問題ないのだろうが,先々回に行った時だったか,既に二組の客がいて,年配でやや鈍重な感じの店員は,そのひと組に対応していた。もうひと組が待っていた。コの字型なので,両隣にいる店員には,隣のコーナーの様子はわからないらしい。あるいは,複雑な事情があって,気付かぬふりをしていたのかもしれない。

 せっかちなので,接客中の店員に,「他に人はいないんですか」と言うと,「呼んできます」と行って出ていき,しばらくして一人連れて戻ってきたが,新しくきた店員は当然,先に待っている客の応対をするわけである。単純に,混んだところを手空きの店員たちが手伝うという体制ではなかったようだ。こうして,小さなトラブルは拡大していって,最後にフロアの担当であるという課長から謝罪の言葉を頂いた。

 今日,行ってみたら,その部署の店員は二人と倍増し,若くなっており,その他に何人も遊弋し,いかにも管理職という人たちがそこここに立っていた。以前は,客の半分しか店員がいなかったが,今日は3倍である。

 やればできるではないか,と思うより,そう売り上げに貢献していないはずの男性用商品売り場にも人員を大量投入をするということにあらわれているデパートの苦境がむしろ心配になった。

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2009年4月13日 (月)

Suicaとpasmoと電話

 2月に山形に行った時,山形新幹線も走る奥羽本線の駅の改札口にJR東日本のSuicaの読み取り機があった。よく見ると,モバイルSuica専用で,カードのSuicaは使えないと書いてあった。

 要するに携帯電話だけしか使えないのだった。カードより携帯電話が標準というか普通だということがよくわかった。カードのSuicaを持って安心していられるのは,首都圏だけのことなのだ。

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 ICカードのpasmoで駅の改札を通ろうとして,ふと,昨日のことを思い出した。

 都内の地下鉄の駅で,改札口を通る前に,電話をしようと思った。幸いなことに公衆電話があった。けれども10円玉がなかった。100円玉は二つあった。10円ですむのに100円を入れるのはためらわれた。そうだ,切符(160円)を買えばいいと思った。電車に乗るときはいつもpasmoを使っている。今回,切符を買えば,おつりに10円玉が来る。そこで,切符を買って,おつりを得て,切符をポケットに入れて,コインで電話をした。その後の記憶が不確かなのである。

 家に帰って,(確認することを覚えていたのは我ながら感心だが)昨日の上着のポケットを調べたら未使用の切符が出てきた。

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2009年4月11日 (土)

半袖,犀

 昨日の9時半頃,地下鉄の四谷駅で半袖の女性を見かけた。その後,二人,電車の中で半袖姿をみた。

 十人に一人はコートを着ている中で半袖である。これまで,自分がコートを着ている間は冬,半袖の時が夏,その間が春と秋という季節感できた。春はどんどん短くなり,やがてなくなってしまうのだろう。

 同日夜のフジテレビの「LIVE2009ニュースJAPAN」のキャスター,滝川クリステル様も半袖姿でのご登場であった。日替わり衣装にご自身の意思はどの程度反映されているのだろうかと思った。

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Clara  グリニス・リドリー『サイのクララの大旅行 幻獣,18世紀ヨーロッパを行く』(Ridley, Glynis.Clara's grand tour : travels with a rhinoceros in eighteenth-century Europe. 矢野真千子訳.東洋書林,2009. 263p.)に満足できるのは,これがサクセスストーリーだからではないか。

 18世紀半ばにインドでたまたまインドサイのクララを手に入れたオランダ人の船長ヴァン・デル・メールは,喜望峰周りの船でヨーロッパに連れて行き,ドイツ,オーストリア,スイス,フランス,イタリア,イギリスを巡業し,どこでも大歓迎を受け,興行師として成功を収める。

 欧州では犀そのものがよく知られていおらず,デューラーが2世紀以上前に想像で画いた獰猛な鎧姿の木版画の影響が大きかった。クララは人間によくなつき,特別な胃のために始終,モグモグと草を食べるだけのおとなしい動物であったが,欧州の人々はその姿に熱狂し,ヴァン・デル・メールは神聖ローマ帝国皇帝から男爵の爵位を与えられ,マリア・テレジアからは通行証を得た。

 著者のグリニス・リドリーは,この時代のクララの興行の痕跡を新聞や日記だけでなく,ポスターや絵,マイセン磁器やコインなどから集めていく。ユニコーン伝説など犀に関わる伝承を解きほぐす表象学的アプローチがあるかと思えば,ヴァン・デル・メールがいかに,長期的視野に立ち,メディア戦略に長けていたかという分析もある。自動車一台分の重さのクララを悪路で運ぶのは大変だったが,ストレスを与えないように配慮されていたらしい。

 歴史書であるが,著者の語り方が上手い。途中でこれはフィクションではないかと思ったほどだった。控え目なユーモアがあり,訳者はうまく日本語に移している。

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